いま米国とトランプ氏に欠けているものは何か ベトナム戦争と歴代米大統領の野心と苦悩
私は連休中、いつものように原稿を書いたり、海外の論文を読んだりして過ごしていました。変化の少ない日常でしたが、NETFLIXのドキュメンタリー「ターニング・ポイント: ベトナム戦争」(5回シリーズ)をまとめて視聴しました。誰もが知っている歴史上の人物から、私が個人的に取材したことがある方まで、色々な人が出てきて、大変おもしろかったです。
私が特に興味をひかれたのが、歴代米大統領の野心と苦悩でした。ケネディ大統領は本気で「共産主義ドミノ」を恐れ、ベトナムへの軍事介入を決心しましたが、当初は「軍事顧問団の派遣」と言い張り、実戦部隊を投入したことを明らかにしようとしませんでした。ジョンソン大統領は、米国内の反戦運動に悩まされ、結局、「大統領職に専念する」という理由で再選をあきらめました。

軍事歴史博物館=25年2月にハノイ近郊
ジョンソン大統領の時代には、すでに和平を求める動きが始まっていましたが、1968年の大統領選で共和党のニクソン陣営は、北ベトナムに対して「自分たちなら、もっと良い条件で和平交渉ができる」ともちかけました。69年に就任したニクソン大統領も71年には米軍撤退を決意していましたが、「同盟国を見捨てた」というレッテルを貼られることを恐れ、自身の再選も考慮して撤退の時期を遅らせました。大統領補佐官や国務長官を務めたキッシンジャーは、米軍撤退と南ベトナム崩壊の時期をずらせば、米国への批判を和らげられると考えました。
結局、パリ和平協定は73年1月に、米軍撤退は73年3月に実現し、75年4月に南ベトナムが崩壊して、戦争が終結しました。歴代米大統領の野心と打算によって、ベトナム戦争はより長期化しました。ただ、逆にみれば、「同盟国を見捨てることはできない(同盟国を見捨てれば、米国は国際社会から信頼されなくなる)」と考えた結果でもありました。ジョンソンのように自ら、権力の座から降りることを選択した人物もいました。
ドキュメンタリーを見ながら、私がこうした点に注目したのは、ドキュメンタリーに出てくる米歴代大統領と現在のトランプ米大統領とでは、所作に大きな乖離があるからです。