自衛隊の個人情報収集は行き過ぎたリスト化か 熊本日日新聞の報道から読み解く「情報活動」の境界線
熊本日日新聞は7月、陸上自衛隊の「現地情報隊」が、大学教授やNPO法人代表ら市民を対象に、「愛国心」や「対自衛隊感情」といった思想信条の情報を組織的に収集しているなどと報道しました。小泉進次郎・防衛相は7月24日の会見で「現時点で不適切な活動を行ったことは確認されていない」と語りました。

自衛隊の活動内容について発表する小泉進次郎防衛相=2026年8月1日午後4時22分、防衛省、佐藤瑞季撮影
報道で知る限り、問題点は多々ありそうですが、なぜ、小泉氏はこう答えたのでしょうか。この問題は「正しく批判する」ことで、今後国会などで議論が予想される「インテリジェンス(情報活動)機能の強化」という大きな争点に生かすことができそうです。
熊本日日新聞の報道によれば、現地情報隊は国内の有識者を対象に調査をする際、「愛国心」や「対自衛隊感情」といった思想信条のほか、「性的嗜好」や「異性関係」といった個人情報などを調査・収集し、数千人分を報告書にまとめていたそうです。同紙は「現地情報隊は本来、自衛隊の派遣先となる海外情報の収集が任務だ。それを離れ、国内で私的情報を収集する活動に安全保障上の必要性は認められない」と指摘しました。
本来の任務とズレた実態
元陸自幹部によれば、現地情報隊はイラク戦争(2003年)後、自衛隊の海外派遣や邦人救出などを念頭に陸自中央情報隊の下に設置されたそうです。邦人救出は緊急性が高い半面、自衛隊が展開した経験がない場所に向かわなければならない事態が想定されます。テロや政情不安などが起きる可能性が高い中東・アフリカなどの現地治安状況、道路事情、気候、文化などの情報を部隊に提供することが任務だそうです。
陸自が海外に派遣されていれば、現地情報隊も同行しますが、国内で活動することが大半です。そのため、現地事情に詳しい専門家をあらかじめリストアップし、必要に応じて話を聞くようにしていたそうです。ただ、専門家には自衛隊をよく思わない方もいます。そのため、作業を効率的に進めるため、協力してくれるかどうかをあらかじめ確認する必要があったということです。
ただ、そうであれば、「愛国心」を入れる必要はありません。元陸自幹部は「リストをつくった人間に『自衛隊に反対する人は愛国心がない人だ』という先入観があったのではないか」と語ります。元幹部は「専門家がどういう人なのかを調べるのは、現地情報隊の任務の目的ではなく、目的を達成するための手段だ」とも指摘します。
自衛隊は日本国民から正当な評価を受けるべきだと思いますが、自衛隊員もまた、「国民の代表」として、分け隔てなく対応する必要があります。「自衛隊に協力してくれる人」「くれない人」を分けておくことは業務上、あり得る話だと思いますが、「くれない人」を敵視するような考え方は問題があります。その点、小泉氏が「不適切な活動を行ったことは確認されていない」と語って済ませて良い問題ではないでしょう。
国家機関による情報収集の「合理性」
では、果たして自衛隊や他の国家機関は一般市民の思想調査をすることがあるのでしょうか。