「9.11」とハリウッド映画が作った刷り込み ムスリムへの「誤解」と社会分断のリスク
先週のニュースレターで、日本で起きているイスラム教徒(ムスリム)によるモスク(イスラム教の礼拝所)建設や、土葬のための墓地整備を巡る話題について触れました。私は「宗教への関心が薄い日本人がなぜ、ムスリムに反発や恐れの感情を抱くのだろうか」という疑問を持っていました。先日会った、ムスリムに詳しい日本政府関係者の知人がいろいろと教えてくれました。その話を聞いて、「中国やロシアなどが認知戦に血道を上げている理由」がわかった気がしました。
日本で暮らすムスリムの広がり
知人によれば、日本でムスリムのコミュニティー形成の先駆けとなったのがパキスタンの人々だったそうです。出入国在留管理庁などの統計によれば、2025年6月時点で日本在住のパキスタン人は約3万2千人です。日本に住む外国人は400万人近くですが、パキスタンの人々もコミュニティーをつくり、一定の存在感を持っています。1990年代までは留学生など数千人規模でしたが、2000年代から2010年代にかけて大きく伸びたそうです。
次に増えたのが、バングラデシュ人で3万人前後が日本に住んでいます。インドネシアやマレーシアなど、イスラム教徒が多数を占める東南アジア諸国からやってくる人々も増えています。現在、日本に住む外国籍のムスリムは数十万人にのぼるとする推計もあるようです。
では、なぜ、ムスリムを嫌悪したり、危険視したりする日本人がいるのでしょうか。知人は「日本に住むムスリムが増え始めた時期がよくなかった。9・11(2001年9月11日に起きた米同時多発テロ)や、国際テロ組織アルカイダ、それをかくまったアフガニスタンのタリバン、イスラム国などに関するニュースが繰り返し報じられ、日本社会の一部に『イスラム教は怖い』というイメージが形成された」と語ります。
知人は「埼玉県内で一部のクルド系住民をめぐる生活騒音などの住民トラブルが報じられたことも影響した」と語ります。クルド人問題をニュースで知った人々の一部が「やはり、ムスリムは怖い」とさらに考えるようになったというわけです。
確かに、このころのハリウッド映画は、ソ連・東欧圏の共産主義者に代わる悪役として、イスラム過激派を「起用」していました。日本人はイスラム教に対する知識がないため、「ムスリム=過激派」という刷り込みが行われてしまったとも言えます。
ムスリムは怖い存在なのか?
では、実際にムスリムは怖い存在で、日本政府もその動向を警戒していたのでしょうか。知人は「リオネル・デュモンのような人物がいたことで、政府が緊張したことも事実です」と話します。