韓国大統領のサッカー『無能』発言、政局混乱の予兆か?透ける権力闘争
韓国の李在明大統領による、サッカーワールドカップ(W杯)北中米大会を巡るSNSへの投稿が波紋を呼んでいます。韓国では、李氏が「無能」呼ばわりした洪明甫監督へのバッシングなどが続いています。日本では高市早苗首相との親密な関係が評価され、「良い人」という印象が広がっている李氏ですが、私は「無能発言」はある意味、必然の結果だったとみています。
李氏は6月28日、韓国代表が決勝トーナメント(32強)に進めなかった事態について「予想外の結果に戸惑いを通り越して、あきれている」と投稿しました。「結局、人事がすべてであることが改めて証明された」とし、「能力よりも身内かどうかを重視し、無能な人物を指揮官に選べば、結果は火を見るより明らかだ」と、洪監督を猛烈にけなしました。李氏はその後、韓国代表をねぎらう投稿もしましたが、「政治のスポーツ介入ではないか」という指摘も出ているようです。

非常戒厳から1年となる2025年12月3日、記者会見に臨む李在明大統領=ソウル、清水大輔撮影
なぜ「無能」と言い放ったか
私は6月にソウルに出張し、現職・元職を含む韓国政府や軍、財界、メディア、学界などの関係者約50人に面会しました。李在明政権の評価についても様々なお話を伺いました。そこで、李氏の政治手法についてもいろいろな話を聞きました。
李氏は進歩(革新)系与党「共に民主党」の政治家ですが、主流派ではありません。韓国の進歩系主流派とは、主に軍事政権を打倒するための学生運動の経験者を指します。軍事政権と親しかった米国や日本に反発すると同時に、軍事政権と対立した北朝鮮に親近感を持ちやすい傾向があります。例えば、8月の党代表選で再選に意欲を示している鄭清来前代表は学生時代、ソウルの米国大使館に乱入して逮捕された経験があります。
李氏は学生運動の経験はありません。極貧家庭に育ち、高校には通わず、特待生制度で比較的無名の中央大学校に入ったため、韓国で重要だとされる「学縁(ハギョン)=学閥」とも無関係です。進歩系政治家になったのも、城南市長選で進歩系団体の支援を受けたことなどが影響したとされています。
李氏は2024年総選挙当時、公認権を握る党代表だったことから、次々に自分と同じ「非主流派」を国会に送り込み、党の主導権を握りました。李氏が25年6月の大統領就任後、極端な反日政策を推進した文在寅元政権と距離を置き、日本との関係改善を推進したのも、非主流派だった背景が影響しています。
非主流派の大統領
ただ、党非主流派の李氏の立場は依然脆弱です。主流派は南西部の全羅道を中心に強固な基盤があり、結束も固いと言われています。8月の代表選は、議員だけではなく、党員すべてに一票を与える方式で行われる見通しです。党員数で勝る主流派は鄭清来氏を推しており、金民錫前首相を推す李在明氏ら非主流派と接戦になりそうです。私が面会した政界関係者らは「鄭清来氏が勝利すれば、28年総選挙の公認権を握る。所属議員は鄭氏の顔色をうかがうようになり、党は青瓦台(大統領府)の言うことを聞かなくなるだろう」と話していました。
李在明氏はこうした政治状況に対抗するため、どんな手を打っているのでしょうか。