影の主役はトランプ大統領だった――中朝首脳会談の裏側を読み解く
中国の習近平国家主席が8日から9日にかけて平壌を訪れ、北朝鮮の金正恩総書記と会談しました。習氏の訪朝は7年ぶりのことです。超大国の指導者がわざわざ出かける以上、単なる親善や経済協力にとどまらない戦略的な思惑があったと思います。両国の国営メディアが伝えていない裏側とは何でしょうか。疑り深く、すぐ最悪のケースを想定する私の想像ですが、おつきあいください。

2026年6月8日夕、平壌の木蘭館で記念写真に納まる金正恩朝鮮労働党総書記(右から2人目)と妻の李雪主氏(右)、中国の習近平国家主席(左から2人目)と妻の彭麗媛氏⁼朝鮮中央通信ホームページから
報道が強調した「表の変化」
中国国営の新華社通信、北朝鮮の朝鮮中央通信はともに、両首脳が関係強化で一致したと伝えました。報道で目立った点と言えば、2019年の習氏の前回訪朝時に、中国側が伝えた習氏の「朝鮮半島の非核化」という言葉が今回は消えました。また、習氏は北朝鮮との交流強化の一つとして軍事分野の交流を挙げました。金正恩氏は「ひとつの中国」を支持すると伝えました。
多くのメディアはこうした点に着目し、「中国はロシアと北朝鮮の急接近を警戒し、北朝鮮との関係を強化した」「中国が北朝鮮をカードにして米国を牽制している」などの論調が目立ちました。
果たしてそうでしょうか。
まず、中国はロシアの影響力をそれほど重大視していないと思います。中国の経済力は名目GDP(国内総生産)ベースで、ロシアの 約7~9倍に達します。中国の経済支援なしに、ロシアはウクライナ戦争を戦い抜けません。中国はロシアが北朝鮮に対して核協力をするところまで踏み込むことは許さないでしょうが、ロシアは伝統的に攻撃兵器を北朝鮮に支援することには慎重でした。ロシアも朝鮮半島で影響力を拡大したいとは考えていないでしょう。中朝の関係強化には、別の狙いがあるはずです。
次に、ご存じのように、習近平氏はトランプ米大統領との5月の米中首脳会談で「建設的で戦略的な安定した関係」で合意しました。中国は米国との競争は望まず、超大国同士の協力関係を望んだと言えるでしょう。中国は国内経済が良くないうえ、発展途上国に対する有償支援が焦げ付き、今や「世界一の債権国」(外務省元幹部)になっています。そのうえ、トランプ政権によるベネズエラやイランに対する軍事行動で、周辺環境が不安定になっていることを憂慮しているようです。そのような状況で、北朝鮮と一緒に米国に挑戦するような行動を取ったとは思えません。
主役は習氏でも正恩氏でもなかった?
では、何が会談の目的だったのでしょうか。