韓国の若者たちは、なぜ保守化するのか 株高の熱狂と住宅難という絶望のはざまで

「株をやらない若者はいない」と言われる韓国。半導体景気を追い風に株価は上昇を続けています。一方で、若者たちから将来への希望を失い、保守化しているといいます。なぜ彼らは保守化し始めたのでしょうか。
牧野愛博 2026.07.19
読者限定

「今日のコスピ(KOSPI=韓国総合株価指数)はいくら上がったの」。韓国の人々が挨拶代わりにしている言葉です。KOSPIは6月半ば、1年前の約3倍となる9千ポイントを初めて超え、過去最高圏に達しました。米国などの市場リサーチ会社からは「今年中に1万ポイントを超える」という予測も出ています。

なぜ、こんなに上昇しているのでしょうか。その背景には、韓国半導体大手のSKハイニックスとサムスン電子の好調な業績があります。両社はKOSPIの時価総額で大きな比重を占めています。世界は人工知能(AI)ブームです。米AI関連企業は各地にデータセンターを設立しようとしており、世界的に半導体が不足する状況が生まれているからです。

「株をやらない若者はいない」

韓国経済紙幹部の知人は「韓国の株式市場で上昇しているのはSKハイニックスとサムスン電子だけと言っていいくらい、いびつな状況になっている」と語ります。私の知人の息子さんはSKハイニックスに勤めています。「今年のボーナスはいくらもらったんですか」と私が下世話な質問をすると、知人は「1億ウォン(1千万円)くらいだったようだよ」と教えてくれました。30代半ばの息子さんは未婚ですが、「これで結婚資金ができた」と喜んでいたそうです。ニュース番組は「医学部ではなく、エンジニアなどを養成する学部を希望する学生が増えている」と報じていました。

ソウル・光化門広場=6月25日、牧野愛博撮影

ソウル・光化門広場=6月25日、牧野愛博撮影

そんな好調な株式市場に韓国の人々は熱中しています。特に若い人々の間では「株をやらない人はいない」とまで言われています。若い世代は皆、スマホに証券会社のアプリをダウンロードしています。知人の一人は「登録した口座を通じて売買するため、面倒なやり取りもない」と語ります。

韓国では、株取引指南のユーチューブが乱立しています。今回のソウル出張中、バスや地下鉄の車内でユーチューブを一心不乱に見つめたり、スマホで株取引をしたりする若いサラリーマンの姿をあちこちで見かけました。株取引が始まる午前9時には、トイレにこもって株取引に熱中する社員もいるそうです。

保守化を生む絶望感

では、なぜ若い人々が株に夢中になるのでしょう。

この記事は無料で続きを読めます

続きは、1538文字あります。
  • 牧野愛博(まきの・よしひろ)

すでに登録された方はこちら

読者限定
韓国大統領のサッカー『無能』発言、政局混乱の予兆か?透ける権力闘争
読者限定
韓国メディア危機から見えた「権力」との距離感 「つかず、離れず」「是々...
読者限定
SNS時代の安全保障に欠かせない哲学と理念 「見栄えや演出」に潜む危う...
読者限定
その時、米軍は来るのか イラン攻撃が私たちに与えた教訓
サポートメンバー限定
イラン戦争が突きつけた米国覇権の終焉と国際秩序の転換 米有識者の視点
読者限定
国力研究会のネーミングが示す、日本政治の課題 スローガンだけでいいのか...
サポートメンバー限定
影の主役はトランプ大統領だった――中朝首脳会談の裏側を読み解く
サポートメンバー限定
太平洋が米中に2分割される日が近づいている 「米軍が去る日」にどう備え...