トランプ政権の衝撃、ラブコールを送る中国 挟まれた日韓は中国とどのように付き合うべき?
東京・芝の東京タワーで15日夕刻、日韓国交正常化60年を記念した点灯式が行われました。ソウルの南山公園にあるNソウルタワーでも同時刻に点灯式があり、両国関係者が記念の年を共に祝い、友好親善を深めていく考えを確認しました。日本政府観光局によれば、2024年に日本を訪れた韓国人観光客は過去最高の約882万人。韓国観光公社によれば、24年に韓国を訪れた日本人は、最も多かった中国人の約460万人に次ぐ約322万人でした。日韓両国は最も親しい隣国だと言えるでしょう。
この日韓両国の安全保障が揺れています。トランプ米政権の登場です。トランプ大統領は1月20日、北朝鮮を「核保有国」と呼びました。北朝鮮の非核化は、近隣の日韓両国にとって譲れない目標です。でもトランプ政権は「米国ファースト」を唱えています。米本土の安全だけを考えて、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の廃棄と引き換えに、トランプ大統領が北朝鮮の核保有を部分的に認めるかもしれません。
接近する中国と日韓の不安
日韓の不安を見透かしたように、猛烈に日韓両国に接近しているのが中国です。中国の習近平国家主席は6日、韓国の禹元植国会議長と会談しました。習氏が国家元首でもない議長に面会するのは、極めて異例の厚遇と言えます。中国外務省は11日、尖閣諸島近海の日本のEEZ(排他的経済水域)内に2023年7月から設置していた観測用ブイを移動させたと発表しました。尖閣諸島の実効支配に懸念を抱く日本への配慮とみることもできます。あるいは、ロシアに接近して言うことを聞かない北朝鮮への牽制(けんせい)という意味もあるでしょう。
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トランプ米大統領=2025年2月7日、米ワシントンのホワイトハウス、恵原弘太郎撮影
その中国は今、日中韓会談にも積極的な姿勢を示しています。複数の関係筋によれば、3月中に日本で日中韓外相会議が開かれる見通しです。中国は今年の早い時期に日中韓首脳会議を開くよう提案もしています。日中韓会議は2008年から毎年の開催を目指して始まりましたが、中国が外交用の圧力カードとして使うため、しばしば開催が見送られてきました。中国の日韓に対するラブコールは「同盟国との衝突を繰り返すトランプ政権を出し抜いて、新しい世界のリーダーに収まるための全方位外交の一環」(中国専門家)と言えそうです。
では、日韓はどう中国と付き合えばよいのでしょうか。
「日本が中国と戦えば、確実に負ける」。そう語る自衛官もいるほどの日本と中国のパワーバランス。その中で、石破首相の対中政策はどう評価できるのでしょうか?牧野記者が昨今の事例などから読み解きます。