世界の海は中国船ばかり 拡大する米中の格差、日韓は救世主になれるのか?
米国のジョン・フェラン海軍長官が4月から5月にかけて日韓両国を訪問しました。フェラン氏は米国の造船業衰退の現状を訴えました。海軍の艦艇数で、米国が中国の後塵を拝しているからです。米国は日韓との間で米艦船の整備・補修などを巡る協力を強化することで合意しました。今後は日韓両国が米軍の艦船を建造する可能性もあります。でも、本当に中国との「艦艇格差」を解消することができるのでしょうか。
スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の資料によれば、2000年当時の米海軍艦艇数は318隻で中国海軍艦艇の110隻を大きく上回っていました。ところが、2024年現在の中国海軍艦艇数は370隻で、米海軍の297隻を上回っています。2023年7月に流出した米海軍情報局資料によれば、中国の年間船舶建造能力は米国の232倍以上とされました。SIPRIはこのままいけば、2030年には中国海軍艦艇数は435隻、米海軍艦艇数の304隻となり、両国の差は更に開くと予想しています。
伸びる中国、遅れる米国
実際、米軍の艦艇建造は遅れに遅れています。最新鋭のジェラルド・フォード級原子力空母の2番艦「ジョン・F・ケネディ」は当初、2022年の海軍納入を予定していましたが、まだ実現していません。当初、32隻の建造が計画されたズムウォルト級ミサイル駆逐艦は最終的に3隻にまで削減されました。米海軍が中国に対抗するための構想「Distributed Maritime Operation」(DMO:分散型海上作戦)の主力として位置付けるコンステレーション級ミサイルフリゲートの建造も遅れています。サイドル米海軍次官補代理は4月、米議会で「(艦船の米海軍への)納入が1年から4年遅れており、コストも増えている」と証言しました。

横須賀港に向かう米原子力空母「ジョージ・ワシントン」=2024年11月22日、神奈川県横須賀市沖、朝日新聞社ヘリから、相場郁朗撮影
私たちが米軍で思い出すのは、第2次世界大戦当時の圧倒的な艦艇建造能力でした。1941年12月の真珠湾攻撃当時、米海軍の艦艇数は400隻弱で、太平洋艦隊は100隻余りでした。対する日本海軍は約230隻と互角以上の戦力を整えていました。ところが、終戦時には日本海軍の艦艇数は半減しました。大半は潜水艦や駆逐艦で、燃料不足で稼働もままならない状況でした。これに対し、米海軍は約1千隻以上に膨れ上がっていました。国有に加えて民間の造船所をフル稼働させた成果でした。
今、米国にかつての面影はありません。ポイント・オブ・ノーリターンを越えてしまった理由と背景を読み解きます。日本と韓国は救世主となれるのでしょうか?