軍事パレードが語り掛けるもの 戦後秩序への挑戦?愛国心?それともため息?
9月3日、中国・北京の天安門広場で「抗日戦争勝利80年」を記念する軍事パレードが行われました。私はその前日、ベトナム・ハノイのホーチミン廟に面したバーディン広場で行われた、独立80年を記念するパレードを取材しました。
パレードといえば、6月には米・ワシントンで、トランプ政権による米陸軍創設250年を記念したパレードがあったのも記憶に新しいところです。北朝鮮も10月10日には朝鮮労働党創建80年を祝い、大規模なパレードを実施するようです。各国の軍事パレードを比較すると、その国が置かれた様々な表情が見えてきます。
パレードを実施する四つの理由
陸上自衛隊東北方面総監を務めた松村五郎元陸将によれば、軍事パレードを実施する背景には、大きく分けて四つの理由があるそうです。最も大きな理由は国民の士気高揚です。愛国心を盛り上げ、政府への求心力を高めます。2番目は軍隊への国民からの支持を得ること、3番目は自国の兵器を見せることで対外的な抑止力を高める狙いがあります。最後に4番目の理由としては、ロシアや北朝鮮のような権威主義国家の場合、政府の権威を示して国民の反乱を抑える目的があるといいます。
まず、「愛国心の盛り上げ」と「国民の支持」ですが、中国やベトナムのパレードは一定の成果を上げたようです。中国の内情に詳しい李昊(りこう)・東京大学大学院准教授は中国のパレードについて「大勢の人員や様々な装備を結集し、一糸乱れぬ行進が続く勇ましい演出は、中国人が好むやり方です」と分析します。陸自中部方面総監を務めた山下裕貴元陸将によれば、行進した兵士たちはお互いのひじとひじをくっつけて、横並びの体形が乱れないよう工夫があったといいます。
中国、ロシア、北朝鮮が並び立った意図とは?
日本など海外メディアは、習近平・中国国家主席、ロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩総書記が並び立った姿を捉え、「戦後秩序への挑戦だ」と報じていました。もちろん、その意図はあったと思いますが、習氏は演説で、日本や米国を名指しで批判することを避けました。
なぜだったのでしょうか。