トランプ大統領を止める人はもういない… それでも日本が学べるのは
訪米した赤沢亮正経済再生担当相は16日、米政府の関税措置を巡り、トランプ米大統領やベッセント財務長官らとワシントンで会談しました。トランプ政権の関税政策は今後どこに向かい、日本の安全保障にも影響があるのでしょうか。米政府元当局者の知人は、トランプ氏の政策の理由について「不法移民が支えてきた米国のシステムに限界が来たからだ」と説明します。そして「日本も今のシステムに限界が来ている。トランプ氏はそれを許さないだろう」と語ります。

トランプ米大統領が2025年4月16日、自身のSNSに、訪米した赤沢亮正経済再生相(左)との写真を投稿した=トゥルース・ソーシャルから
トランプ氏は、関税政策を推進する理由の一つとして「製造業を米国に取り戻す」と主張しています。米国を支えているのは全体の80~90%を占めるサービス業で、製造業や農業は全体の1割にも満たない状態です。労働力が安い中国などに製造業の拠点を奪われたからですが、逆に言えば、米国人自身が製造業や農業で働くことを好まなかったという事情もあります。
米政府元当局者の知人によれば、クリントン政権時代(1993~2001年)から製造業や農業での人手不足問題が顕在化しました。その隙間を埋めたのが不法移民たちでした。不法移民は安い給料で、3D(きつい・危険・汚い=difficult・dangerous・dirty=日本の3K)仕事で働きました。知人は「不法移民のせいで給料は安く据え置かれ、さらに人が集まらない悪循環が生まれた。合法移民や元々製造業などで働いていた人々の不満が急増した」と語ります。
米州住友商事ワシントン事務所の渡辺亮司調査部長も「ここ数十年、米歴代政権は政党を問わず、自由貿易を推進してきましたが、貿易拡大やオートメーション化によって製造業の雇用が失われたことに対し、労働者に十分な支援をしてこなかったことも、労働者の不満を高め、トランプ大統領当選をもたらしたと思います」と語ります。そのうえで、「トランプ氏としても、支持基盤である彼らを救う救世主として公約を果たす姿勢を示す必要があるのです」と話します。
周りはイエスマンばかり
トランプ氏の政策は、恐らくうまくいかないでしょう。すでにサービス業主体になっている米国社会で、製造業に就きたいと思う人は多くありません。さらにトランプ政権の移民対策で、不法移民の数も減っています。
また、トランプ氏の周りはイエスマンばかりです。第1次政権時代、トランプ氏のレゾリュートデスク(執務机)にあった米韓FTAからの離脱を命じる書類を密かに持ち去ったとされるゲーリー・コーン米国家経済会議(NEC)委員長や、財界などを通じてトランプ氏の関税政策にブレーキをかけ続けたスティーブ・ムニューシン財務長官のような人々は、もはや見当たりません。目標が正しいとしても、やり方が稚拙で粗っぽく、同盟国・友好国の多くを敵に回すでしょう。
でも、ひとつだけ、私たちも学ぶべき点があると思います。
誰がなんと言おうと、批判を受けようと突き進むトランプ氏。その姿から学ぶべき点とは?牧野記者が指摘するのは、米国のあることを「恐れない姿勢」でした。