トランプ氏が平壌で核を黙認する日 ソ連と北朝鮮を知る研究者との会話で見えてきた実情と謎

旧ソ連と北朝鮮という二つの国家を知るランコフ教授との対話をお届けします。トランプ氏が核を黙認する最悪のシナリオは現実になるのか。なぜ北朝鮮はわざと経済を壊し、インフレを起こすのか。米朝の裏側と経済の「謎」を読み解く、深い対話の【前編】です。
牧野愛博 2026.09.06
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8月下旬、東京で古くからの知人に会いました。ロシア系オーストラリア人のアンドレイ・ランコフ韓国・国民大学教授です。約40年前、金日成総合大学に留学した経験を持つランコフ氏は、ソ連と北朝鮮という二つの共産主義国家を知る北朝鮮研究者です。ソウル特派員時代から20年ほどのお付き合いです。ランコフ氏との対話はなかなか刺激的で、勉強になりました。

アンドレイ・ランコフ氏=2023年12月23日、東京都内、牧野愛博撮影

アンドレイ・ランコフ氏=2023年12月23日、東京都内、牧野愛博撮影

トランプ氏を平壌へ、金正恩氏の狙い

まず、トランプ米大統領が意欲を見せている「米朝首脳会談」について意見交換しました。ランコフ氏は北朝鮮にとってのメリットについて「核保有国としての地位の獲得」「北朝鮮制裁の緩和」の二つを挙げました。「米国が北朝鮮の核を黙認するのは時間の問題です。制裁が緩和されれば、外国の投資を受けられるし、南北協力に前向きな韓国の李在明政権も緩和を歓迎するでしょう」。

ただ、ランコフ氏は「今年中に会談が行われる可能性は50%以下でしょう。イラン攻撃が年末までに終わる見通しが立たず、トランプ氏に余裕がないからです。北朝鮮も焦る必要はありません」と指摘します。

私も北朝鮮が得られるメリットについて同感です。トランプ氏の発言後、北朝鮮は会談に応じるかどうか態度を示していませんが、拒否もトランプ氏への批判もしていません。どこまで米国が降りてくるのかを見定めているのでしょう。開催時期については、年内実施の可能性も5割ほどあると思っています。イランを巡る戦乱は年末までに終わらないでしょうが、北朝鮮が会談に応じれば、トランプ氏はすぐにでも会談場所に駆けつけるでしょう。

私は、金正恩総書記はトランプ氏を平壌に招待すると考えています。中国の習近平国家主席が今年5月にトランプ氏を北京で歓待し、トランプ氏を大いに満足させたことに学んでいるからです。トランプ政権では国家安全保障会議(NSC)や国務省の機能が大幅に低下しており、まともな戦略が立てられない恐れがあります。「歴史的指導者」として持ち上げられれば、トランプ氏は後先を考えずに、核の黙認と制裁緩和に応じるかもしれません。

金正恩氏は2019年2月のハノイでの米朝会談が決裂したのは、日本による強い反対があったからだと信じているようです。平壌なら、うるさい日本や毛嫌いする韓国の政府・メディアなどを受け入れずに済みます。

次に私たちは北朝鮮の経済・社会について意見交換しました。こちらはソ連と北朝鮮を知るランコフ氏ならではの、深い洞察を聞くことができました。韓国のオンライン北朝鮮専門サイト「デイリーNK」によれば、2026年8月16日現在の平壌でのコメ1キロの値段は4万6800ウォン。2024年8月の1キロあたり約8千ウォン、2025年8月の1キロあたり約2万4千ウォンから急激に上昇しています。為替レートは、2026年8月16日時点で1ドルあたり6万7500ウォン。2024年8月の1ドルあたり約1万5千ウォン、2025年8月の1ドルあたり約4万3千ウォンから、ウォンの大幅な下落が続いています。なぜでしょうか。

わざと超インフレを引き起こす北朝鮮の真意

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