トランプ氏が平壌で核を黙認する日 ソ連と北朝鮮を知る研究者との会話で見えてきた実情と謎
8月下旬、東京で古くからの知人に会いました。ロシア系オーストラリア人のアンドレイ・ランコフ韓国・国民大学教授です。約40年前、金日成総合大学に留学した経験を持つランコフ氏は、ソ連と北朝鮮という二つの共産主義国家を知る北朝鮮研究者です。ソウル特派員時代から20年ほどのお付き合いです。ランコフ氏との対話はなかなか刺激的で、勉強になりました。

アンドレイ・ランコフ氏=2023年12月23日、東京都内、牧野愛博撮影
トランプ氏を平壌へ、金正恩氏の狙い
まず、トランプ米大統領が意欲を見せている「米朝首脳会談」について意見交換しました。ランコフ氏は北朝鮮にとってのメリットについて「核保有国としての地位の獲得」「北朝鮮制裁の緩和」の二つを挙げました。「米国が北朝鮮の核を黙認するのは時間の問題です。制裁が緩和されれば、外国の投資を受けられるし、南北協力に前向きな韓国の李在明政権も緩和を歓迎するでしょう」。
ただ、ランコフ氏は「今年中に会談が行われる可能性は50%以下でしょう。イラン攻撃が年末までに終わる見通しが立たず、トランプ氏に余裕がないからです。北朝鮮も焦る必要はありません」と指摘します。
私も北朝鮮が得られるメリットについて同感です。トランプ氏の発言後、北朝鮮は会談に応じるかどうか態度を示していませんが、拒否もトランプ氏への批判もしていません。どこまで米国が降りてくるのかを見定めているのでしょう。開催時期については、年内実施の可能性も5割ほどあると思っています。イランを巡る戦乱は年末までに終わらないでしょうが、北朝鮮が会談に応じれば、トランプ氏はすぐにでも会談場所に駆けつけるでしょう。
私は、金正恩総書記はトランプ氏を平壌に招待すると考えています。中国の習近平国家主席が今年5月にトランプ氏を北京で歓待し、トランプ氏を大いに満足させたことに学んでいるからです。トランプ政権では国家安全保障会議(NSC)や国務省の機能が大幅に低下しており、まともな戦略が立てられない恐れがあります。「歴史的指導者」として持ち上げられれば、トランプ氏は後先を考えずに、核の黙認と制裁緩和に応じるかもしれません。
金正恩氏は2019年2月のハノイでの米朝会談が決裂したのは、日本による強い反対があったからだと信じているようです。平壌なら、うるさい日本や毛嫌いする韓国の政府・メディアなどを受け入れずに済みます。
次に私たちは北朝鮮の経済・社会について意見交換しました。こちらはソ連と北朝鮮を知るランコフ氏ならではの、深い洞察を聞くことができました。韓国のオンライン北朝鮮専門サイト「デイリーNK」によれば、2026年8月16日現在の平壌でのコメ1キロの値段は4万6800ウォン。2024年8月の1キロあたり約8千ウォン、2025年8月の1キロあたり約2万4千ウォンから急激に上昇しています。為替レートは、2026年8月16日時点で1ドルあたり6万7500ウォン。2024年8月の1ドルあたり約1万5千ウォン、2025年8月の1ドルあたり約4万3千ウォンから、ウォンの大幅な下落が続いています。なぜでしょうか。