「米国は80%独裁国家に」 元高官が明かす米NSCの崩壊と赤沢再生相を救った「ラトちゃん」
先日、米中央情報局(CIA)の元アナリストで、バイデン政権末期から第2次トランプ政権初期にかけてホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)でディレクターを務めたジュリア・カーリー(Julia Curlee)氏にインタビューしました。カーリー氏は第2次トランプ政権でNSCが崩壊していく様子を生々しく語ってくれました。私は強い興味を覚え、米国務省の外交官だった知人に追加で話を聞きました。知人の話を聞く限り、米国は「80%くらいの独裁国家」になったようです。
失われたNSCの「調整機能」
カーリー氏によれば、バイデン政権終了時、NSCには186人の政策スタッフがいましたが、25年6月には50人未満にまで減ったそうです。西半球担当は上級局長1人だけで実務スタッフはおらず、アフリカ担当は誰もいないし、中東担当チームは10人から5人に削減されたということです。
カーリー氏は「NSCの重要な機能は調整だ」と語ります。国務省や国防総省、財務省、CIAなどの主張や政策を総合的に調整し、大統領に政策判断を仰ぎます。カーリー氏は「国防総省が国務省との協議なしに作戦を計画すると、外交的な出口は大統領が検討する前に選択肢から消えてしまう」と語ります。
こうしたNSCの調整を助けると同時に、透明性を高めるため、米国は省庁を横断する政策を検討する際、次官補級を含む階層別の省庁間会議を開いて調整します。1986年に発覚したイラン・コントラ事件で、当時のNSC幹部が極秘裏にイランに武器を売却して得た収益を、ニカラグアの反共右派ゲリラ「コントラ」に流していた事件の反省から来ています。ところが、知人によれば、NSCの縮小とともに、この階層別の省庁間会議も開かれなくなったそうです。
トランプ氏が官僚を「敵対者」とみなす理由
カーリー氏によれば、第1次政権時代、トランプ氏が米下院で弾劾訴追されたウクライナ疑惑で証言した関係者は、NSCに派遣されたスタッフについて、「彼らは中立的な専門家ではなく敵対者だ」とトランプ氏に吹き込んだそうです。トランプ氏自身、「在韓米軍撤退など自分がやりたかった政策を官僚たちに邪魔された」という意識が強く、それが第2次政権の「官僚が提案する前に自分が決める」というスタイルにつながったようです。
元国務省の知人は「もともとNSCの動きは政治に影響され、テンポも速い。NSCが調整して政策メニューをいくつか提案し、大統領が選ぶというのが伝統的なスタイルだった。しかし、第2次トランプ政権では、トランプがメニューを考えて、NSCはいかにトランプの口に合うように料理をするのかが仕事になってしまった」と語ります。
そのうえで、知人はこう言います。
「相互関税も、グリーンランド領有の動きも、イラン攻撃もすべて間違いだ。NSCの意見も聞かず、全部トランプが先に思い付きで考えている。だから、中途半端に終わる」
NSCが機能不全に陥った米ホワイトハウスで、日本の政治家や外交官たちはどのような困難に直面しているのか。ここから先は、トランプ氏の「思い付き」に振り回された日米関税交渉の舞台裏と、赤沢大臣を助けた“あの人物”の素顔について明かします。
