「トランプのトリセツ」知りつつも… ショーを乗り切れなかったゼレンスキー大統領
2月28日に米ホワイトハウスで起きた光景に世界中が息をのみました。トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領で激しい口論が交わされたからです。予定されていた共同記者会見や希少鉱物資源を巡る協定への署名が中止になりました。米政府関係筋からは、「トランプ氏のトリセツを知りながら、バンス副大統領の不規則発言に我慢できなくなったゼレンスキー氏」という舞台裏を教えてもらいました。
この関係筋によれば、米国とウクライナ両政府は、28日の首脳会談に向けた事前協議を行いました。難航した鉱物資源協定についても、「米国がウクライナの戦後の安全保障に向けた取り組みを支持する」という一文を盛り込むことで合意していました。後は、トランプ政権で恒例となった、オーバルオフィス(大統領執務室)でのトランプ・ワンマンショーを乗り切るだけでした。

日米首脳会談で握手する石破茂首相(左)とトランプ米大統領
トランプ氏とゼレンスキー氏がやり合った暖炉の前に椅子が置かれた空間は、オーバルオフィスの窓側にある大統領執務机が置かれた場所と正反対の位置にあります。歴代政権は通常、ここで5分程度、カメラを入れて報道陣に冒頭のやり取りを公開してきました。ところが、トランプ政権では最初の訪問客のネタニヤフ・イスラエル首相、2番目の石破茂首相から始まり、今回のゼレンスキー大統領まで、必ずここで1時間近くの「トランプ・ショー」(日本政府関係者)に付き合わせるのが恒例行事になっています。1時間近くと言っても、大半はトランプ氏と記者団とのやり取りです。トランプ氏がいかに偉大な指導者なのかを内外に発信するための、文字通りのショーなのです。
米政府関係筋によれば、米国とウクライナ両政府は、事前に報道陣公開の場のやり取りについて「全員が笑顔を絶やさない」「ゼレンスキー氏はトランプ氏に感謝の言葉だけを述べる」「鉱物資源協定の話程度にとどめ、戦後安全保障の問題には触れない」などと決めていました。スターマー英首相やマクロン仏大統領らも、ゼレンスキー氏に「公開の場ではトランプ氏に感謝する言葉だけにとどめた方が良い」と助言していたそうです。
バンス氏がトランプ氏におもねったか?
ところが、ショーが始まって40分ほど経った後、悲劇が起きました。
欧州首脳からのアドバイスにもかかわらず、トランプ氏と口論になってしまった理由とはなにか。そして、バンス氏の思惑とは。さらには、元外務省幹部が「トランプ氏のトリセツ」関連で最高評価をつけた首脳についても解説します。