「トランプの文化大革命」が起きている? 「甘い考え」を捨てて知恵を絞る時期が来た

「おべっかばかりだ」。トランプ政権の現状を憂う声が聞こえてきます。中国の文革とも重なる様子から何が学べるのか。牧野記者の解説です。
牧野愛博(朝日新聞専門記者) 2025.05.18
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「トランプの文化大革命」。最近会った元外務省幹部の知人から、霞が関で最近はやっている言葉を教えてもらいました。文化大革命は1960年代から70年代にかけ、中国の毛沢東によって引き起こされた政治運動で、要人の粛清や社会の混乱、経済の停滞を生み、最後は挫折しました。確かに、トランプ米大統領がやっていることは文革の姿に重なります。

トランプ氏は1月20日の就任以降、ブラウン統合参謀本部議長やフランチェッティ海軍作戦部長らを更迭しました。最近では国家安全保障会議(NSC)の幹部やデンマーク自治領のグリーンランドにある米宇宙軍基地宇宙軍基地の司令官が更迭・解任されました。

共同会見で質問する記者を指すトランプ米大統領=2025年2月7日、米ワシントンのホワイトハウス、恵原弘太郎撮影

共同会見で質問する記者を指すトランプ米大統領=2025年2月7日、米ワシントンのホワイトハウス、恵原弘太郎撮影

忠誠競争 「みんなびくびくしている」

トランプ政権が批判する「DEI(多様性、公平性、包括性)」を推進したり、政権を批判する発言をしたりしたことが問題になったようです。米政府関係者の知人は「トランプ氏の側近たちが、過去のSNSやメールのやり取りを調べている。みな、びくびくしている」と話しています。

当然、トランプ氏の周辺では忠誠競争が繰り広げられます。米政府元当局者の知人によれば、最近の相互関税を巡る騒動でトランプ氏が最も評価したのがベッセント財務長官だったそうです。米政府が4月に発動した高関税の上乗せ政策が市場に混乱を巻き起こしました。ベッセント氏は当初から「取引をまず行い、不成立の場合は高関税を上乗せする」というやり方を説いていたそうです。トランプ氏は結局、「90日間の上乗せ停止」を決めましたが、ベッセント氏はその際も「この瞬間まで方針を貫き通したのは大変勇気ある行動だった」とトランプ氏を持ち上げました。

政治家であれば、どこの国でもこの程度の「忠誠競争」はあるでしょう。ポスト狙いで、時の首相に近づく議員が後を絶たない日本の政治家も似たようなものです。

ただ、トランプ政権の場合、深刻の度合いが違います。

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  • 牧野愛博(まきの・よしひろ)

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