「極限状態」、トランプ大統領はどうする? 「ハウス・オブ・ダイナマイト」が突いた政権の急所
Netflixの新作映画「ハウス・オブ・ダイナマイト」(キャスリン・ビグロー監督)が話題に上っています。米国によるミサイル防衛の現場をリアルに追体験できる作品です。手に汗握る展開で高い評価を得ていますが、さらに話題を集めたのが米国防総省の反応でした。私も早速見てみましたが、「ああ、トランプ政権は怒るだろうな」と感じた点が二つありました。
政権が激怒したわけ
第一の点は、トランプ政権が掲げた「ゴールデンドーム構想」に真っ向からかみつく展開だったからです。映画では、米国がアラスカ州フォート・グリーリー基地から地上配備型迎撃ミサイル(GBI=Ground Based Interceptor)を発射しますが、迎撃に失敗します。あまり話すと「ネタバレ」になるので気をつけますが、映画の中では、「EKV(大気圏外迎撃体=Ex atmospheric Kill Vehicle、弾頭のことですね)の射出に成功した後の命中率は61%」というセリフが出てきます。
米ブルームバーグによれば、米国防総省は10月初め、この映画で扱われたミサイル防衛について同省の担当者に宛てて「誤った仮定に対処し、正しい事実を提供し、より良い理解を提供する」よう指示する内部メモを作ったそうです。メモには、迎撃ミサイルが100%の命中率であることが、数年前からのテストで証明されている、という内容もあったということです。同省はブルームバーグに対し、映画について「(トランプ)政権の見解や優先事項を反映していない」とコメントしたということでした。
ミサイル防衛にケチをつけるのは、確かにタイミングが悪かったかもしれません。トランプ大統領は5月20日、新たなミサイル防衛システム「ゴールデンドーム」の開発構想の詳細を発表しました。極超音速ミサイルなどにも対応でき、トランプ氏の在任中に運用を始めるとしています。ただ、米議会予算局はゴールデンドームを20年間運用する場合、多めに見積もると8310億ドル(約120兆円)が必要になると指摘しています。そんな巨額の予算をつぎ込んだあげくに、撃ち漏らす可能性もあるとなれば大変です。国防総省が「百発百中だ」と言いたくなったのも頷けます。
トランプ米大統領
しかし、どんなに完璧な防衛網を作っても、予期せぬ事態は起こりえます。ミサイルの不具合もあるでしょう。敵が米国の持つ迎撃ミサイルよりも多くのミサイルを撃ち込む「飽和攻撃」の可能性もあります。その点、最近の中国による急激な核戦力の増強、中国・ロシア・北朝鮮の連携強化など、情勢を悪化させるニュースが相次いでいます。
迫るミサイル着弾と描かれた人間性
そして、私が「トランプ政権が怒るだろう」と思った第2の点は、映画で描かれた人間性の問題でした。