日本の防衛、核武装が唯一の道なのか? 官邸幹部の発言は「誤った戦略的シグナルだった」

昨年末の首相官邸幹部による核兵器保有発言から議論が続いています。日本が戦略的に利益を得つつ、安全保障環境を確立するにはどうしたらいいのでしょうか? 今回は核保有国であるフランスの研究者によるインタビューから考えます。
牧野愛博 2026.01.25
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私は1月4日配信のニュースレター「『米国の同盟国の核保有論』、専門誌に提唱した米有識者の見解は? 波紋広がる官邸幹部発言」で、日本、ドイツ、カナダの三カ国への「選択的核拡散」を提唱した米オクラホマ大のモーリッツ・グレーフラス准教授とマーク・レイモンド准教授へのインタビューを配信しました。これに対し、日本国際問題研究所のアルべサル・ティモテ特任研究員が「選択的拡散」に反対するコメント「『選択的核拡散』が米国の同盟国と国際秩序にもたらす危険性」を発表しました。私は日本人がなかなかできない議論を米国人とフランス人の研究者が間接的に行ってくれたことがうれしくて、アルベサル氏にインタビューしました。

以下がその内容になります。

アルべサル・ティモテ特任研究員

――日本が核武装するためには何が課題になりますか。

多くの人が「日本は潜在的な核保有国だ」と語るのは、プルトニウムを保有し、将来的に軍事に転用できる可能性もあるからです。

しかし、核保有には多くの難しい技術的要件があります。どの程度の核戦力、どんな核ドクトリン(基本計画)を持つのかといった問題です。

私の祖国フランスでは、最初の核実験は1960年に行われましたが、核兵器配備は63年でした。時代は異なりますが、日本も核開発の決定から配備まで3年はかかるでしょう。その間に(周辺国との緊張が高まる)「脆弱性の窓」が開きます。

日本の場合、技術的な問題よりも、核を保有するという政治的・戦略的な決定ができないと思います。世論や安全保障環境を考慮するべきだからです。

――日本が核武装した場合、中国やロシア、北朝鮮はどのような反応を示しますか。

中朝ロ三カ国が日本に慎重な態度を取ることはないと思います。日本はこの三カ国だけでなく、国際社会全体からの制裁や外交的孤立のリスクにさらされるでしょう。

日本が核不拡散条約(NPT)からの脱退を決めても、NPT第10条は、脱退できる条件として「自国の至高の利益を危うくしていると認める場合」と明記しています。日本の状況が非常に不安定でも、10条の条件を満たしているとは、誰も考えないでしょう。日本の核保有は、国際社会から正当性を否定されます。中朝ロ三カ国による攻撃の可能性も必然的に高まります。

また、日本の核武装は米国の拡大抑止力を信頼していないことを意味します。もし三カ国が日本に何らかの行動を取った場合、米国は日本を助けるのでしょうか。日本の場合、核武装は安全保障を強化するどころか、低下させるでしょう。

日本の核開発は「NPTの終わり」

――日本が核武装した場合、NPT体制や世界の非核化運動にどんな影響を与えますか。

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  • 牧野愛博(まきの・よしひろ)

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