大阪万博で飛行したブルーインパルス 「心得」から見えた自衛隊が抱える苦悩と葛藤
7月12日と13日、航空自衛隊のブルーインパルスが、大阪・関西万博で展示飛行を行いました。編隊を組んだT4練習機が白煙をたなびかせながら、万博会場の上空をアクロバット飛行しました。たまたま、当日に会場を訪れていた知人も、「思わぬプレゼント」に非常に喜んでいました。
華麗な飛行を見せたT4は、双発エンジンの練習機です。5月14日に愛知県で墜落し、搭乗者2人が死亡するという事故もありました。フライトレコーダーを積んでいなかったこともあり、事故原因はわかっていません。空自パイロットの1人は「双発のエンジンが両方停止するのは考えにくく、どうして墜落したのか想像もつきません」と語ります。

大阪・関西万博の会場近くを飛ぶブルーインパルス=2025年7月12日、大阪市此花区、朝日放送テレビヘリから、伊藤進之介撮影
空自は事故から1カ月後の6月13日から訓練飛行を再開していました。万博での飛行も、この再開を受けた措置でした。パイロットの知人も飛行再開後、T4に搭乗したそうです。知人は「T4は丈夫で操縦しやすい機体ですが、事故原因がわかっていない状況のなか、操縦桿を握るのには少し勇気がいりました」と語っていました。
ところで、T4が飛行を自粛していた時期、空自はさらに「別の自粛」もしていました。自衛隊関係者によれば、内倉浩昭航空幕僚長がレセプションや記念行事などの「慶事」への参加を控えていたそうです。自粛は、搭乗者2人の「四十九日」が終わるまで続いたそうです。事故直後の5月15日には、防衛省の金子容三防衛政務官が、現場になった愛知県犬山市を訪れ、原欣伸市長に「多大なるご迷惑をおかけし、おわび申し上げます」と謝罪していました。
空自関係者が家族に伝えていること
空自関係者は「航空自衛隊の文化なのかもしれませんが、事故が起きるとまず周囲に謝罪しなければいけないという意識が働くのです」と語ります。そして、この関係者は空自のファイター(戦闘機パイロット)たちの間で広く知られている「申し伝え」を教えてくれました。ファイターたちは勤務中の心得として家族にこう申し伝えているそうです。