大統領も影響受けた?韓国有名ユーチューバーとは何者か 実際に会って見えてきたもの

韓国大統領にも影響を与えたとも言われる有名ユーチューバー。ソウルの事務所を訪ねた記者に彼は何を語ったのでしょうか。
牧野愛博(朝日新聞専門記者) 2025.02.02
読者限定

韓国の尹錫悦大統領が内乱罪で起訴されました。尹氏は非常戒厳(戒厳令)を出した理由の一つとして、不正選挙疑惑を挙げました。「中央選挙管理委員会のサーバーがハッキングされている」「票計算機が不正に操作された」といった主張は、保守・右翼系のユーチューバーらによって繰り返し唱えられ、尹氏もこの影響を受けたと思われます。実際、複数の関係者は尹氏が極右系ユーチューブ・チャンネルの熱心な視聴者だと語ってくれました。

朝日新聞の牧野愛博専門記者による解説コラムです。硬いイメージがある外交や安全保障について、牧野記者の経験を踏まえた視点で、家族や友人、周りの人に共有したくなるような話題をお届けします。 

尹氏と会食したこともある元閣僚によれば、尹氏は2022年5月の大統領就任当時から、自分に批判的な進歩(革新)系の新聞・テレビを無視していたそうです。主に保守系の新聞・テレビを見ていましたが、独善的な政権運営に対する批判が保守系メディアからも上がり始めると、自分を決して批判しない極右系ユーチューブ・チャンネルばかりを見るようになっていったそうです。私は強い興味を覚えました。尹氏が好んで見ていたという3~4チャンネルのなかでも人気が高い「高成国(コソングク)TV」の保守政治評論家、高成国氏と面会しました。

生放送する事務所で記者が見たのは

ソウルの地下鉄・孔徳(コンドク)駅の近く、雑居ビルの一室に事務所がありました。そこで毎日2時間、生放送を配信しているそうです。私が訪れたのは、ちょうど放送が終了した時間で、数人のスタッフが忙しそうに働いていました。一番出口に近い3畳ほどの部屋が高氏の個室でした。高氏は66歳。「たばこ好きなので、取材中も吸わせてもらうよ」と断ってきました。

高成国氏は主要放送局で活躍する政治評論家でしたが、2018年3月からユーチューブを始めました。「朴槿恵大統領に対する弾劾(だんがい)の際、自分の意見を紹介してくれるメディアがないことに不満を持ったから」と言います。

この記事は無料で続きを読めます

続きは、2080文字あります。

すでに登録された方はこちら

読者限定
「ミッション:インポッシブル」の世界は実在する? CIAの情報収集能力...
読者限定
「火中の栗」を拾う必要はない 安全保障めぐる「日米一体化ありき」を不安...
読者限定
日韓の都合は考えない「トランプの世界」 尹大統領罷免と我々に求められる...
読者限定
沖縄戦の悲劇を繰り返させないためには 日本の防衛と自衛隊駐屯地で考えた...
読者限定
米軍の救援、良いことばかりとは限らない トランプ台風で思い出す緊張ドラ...
読者限定
「米軍が日本から撤退する日」は来るのか? トランプ大統領の不満を読み解...
読者限定
「トランプのトリセツ」知りつつも… ショーを乗り切れなかったゼレンスキ...
読者限定
平日はお酒禁止、大統領に媚びれば昇進? 米国と中国の軍隊をむしばむ厄介...