大統領も影響受けた?韓国有名ユーチューバーとは何者か 実際に会って見えてきたもの
韓国の尹錫悦大統領が内乱罪で起訴されました。尹氏は非常戒厳(戒厳令)を出した理由の一つとして、不正選挙疑惑を挙げました。「中央選挙管理委員会のサーバーがハッキングされている」「票計算機が不正に操作された」といった主張は、保守・右翼系のユーチューバーらによって繰り返し唱えられ、尹氏もこの影響を受けたと思われます。実際、複数の関係者は尹氏が極右系ユーチューブ・チャンネルの熱心な視聴者だと語ってくれました。
朝日新聞の牧野愛博専門記者による解説コラムです。硬いイメージがある外交や安全保障について、牧野記者の経験を踏まえた視点で、家族や友人、周りの人に共有したくなるような話題をお届けします。
尹氏と会食したこともある元閣僚によれば、尹氏は2022年5月の大統領就任当時から、自分に批判的な進歩(革新)系の新聞・テレビを無視していたそうです。主に保守系の新聞・テレビを見ていましたが、独善的な政権運営に対する批判が保守系メディアからも上がり始めると、自分を決して批判しない極右系ユーチューブ・チャンネルばかりを見るようになっていったそうです。私は強い興味を覚えました。尹氏が好んで見ていたという3~4チャンネルのなかでも人気が高い「高成国(コソングク)TV」の保守政治評論家、高成国氏と面会しました。
生放送する事務所で記者が見たのは
ソウルの地下鉄・孔徳(コンドク)駅の近く、雑居ビルの一室に事務所がありました。そこで毎日2時間、生放送を配信しているそうです。私が訪れたのは、ちょうど放送が終了した時間で、数人のスタッフが忙しそうに働いていました。一番出口に近い3畳ほどの部屋が高氏の個室でした。高氏は66歳。「たばこ好きなので、取材中も吸わせてもらうよ」と断ってきました。
高成国氏は主要放送局で活躍する政治評論家でしたが、2018年3月からユーチューブを始めました。「朴槿恵大統領に対する弾劾(だんがい)の際、自分の意見を紹介してくれるメディアがないことに不満を持ったから」と言います。