「ミッション:インポッシブル」の世界は実在する? CIAの情報収集能力のすごさ
ジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件をめぐり、これまで非公開とされてきた8万ページ近い文書が、トランプ米大統領の命令で機密解除されました。そのなかで、米中央情報局(CIA)が日本で活動している事実を明らかにする文書も開示されました。1996年3月の文書には、当時のモンデール駐日大使が「CIA東京支局」の存在を認めることに強く反対した事実が記録されていました。なぜ、米国はCIAの存在を隠したかったのでしょうか。そして、CIAは実際、どのような活動をしているのでしょうか。

2025年3月18日、トランプ米大統領の命令を受け、1963年のケネディ大統領暗殺事件に関する文書が公開された。そのなかには、日本でのCIAの活動についての記載もあった
「CIAだとギラついた感じ」
「ラングレーの東京ステーション」。CIAと接触があった日本政府の元当局者たちは、「CIA東京支局」をこんな風に呼んでいました。米バージニア州ラングレーのうっそうとした森のなかに、CIA本部があります。元当局者の1人は「CIAというとギラついた感じがするし、CIAだと名刺に書いている人もいないから、そんな言い方が定着した」と話します。
1960年代に作成された文書によれば、当時のCIAは国外に約3700人の要員を配置していたそうですが、東京に何人いるのかは明らかになっていません。米政府の元当局者によれば、米大使館には総務・分析部門のCIA要員が詰めていますが、情報・工作部門の要員は外部で活動しているようです。東京・南麻布にある米軍が管理するニュー山王ホテルでCIA要員と会食した関係者もいますが、実際にどこにいるのかはわかっていません。
CIA要員は日本でどのような活動をしているのでしょうか。元当局者の1人は「戦後間もなくは、工作活動も盛んに行われたようだ」と語ります。連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)で、参謀第2部 (G2) 部長だったチャールズ・ウィロビー少将は、日本の共産化を防ぐためとして様々な情報・工作活動を指揮し、後にCIA設立にも関与しました。別の日本政府元当局者は「日本は米国の同盟国として安定した民主主義社会を築いた。CIAは今でも政治家や専門家に接触し、米国に有利な世論形成を目指しているようだが、昔のような非合法とも言える活動はしていない」と語ります。
別の元当局者は、CIAの日本での情報収集活動として「米国は同盟国なので、盗られて困る情報などほとんどない」と語ります。それでも、米国防総省傘下のNSA(国家安全保障局)が「ゴルフボール」と呼ばれる米軍三沢基地の通信施設などを使って電子情報を収集しているようです。米国は英、豪、カナダ、ニュージーランドとともに運用する「エシュロン」と呼ばれるシステムを使い、集めた膨大な電子情報を分析し、特定の言葉を使う送受信者などを絞り込み、情報収集や監視活動につなげていると言われます。
外務省も21世紀に入り、「電磁シールド」と呼ばれる、電磁波が外に漏れることを防ぐ対策を取っています。元幹部の一人は「CIAの技術なら、小型車両くらいの大きさに盗聴設備を積み込める。窓ガラスの振動から室内の会話を盗聴できるし、漏れた電磁波から室内のコンピューターの画面をそのまま同時並行で再現もできる」と語ります。
CIAの情報収集能力はどれほどすごいのでしょうか。
「M:I」で登場するようなイーサン・ハントのようなエージェントは存在するのでしょうか。公式の政府機関であるCIAの存在をあえて隠そうとする背景などに、牧野記者が取材で迫ります。